システム開発のPM(プロジェクトマネージャー)のもとには、なぜトラブルがあんなにも届くのか。
トラブルは、
「すみません。ちょっとお話したいことが。」
という一言と共にやってくる。
晴れても雨が降っても、体調が良くても悪くても、朝の占いが1位でも、学生の頃の友人と会う約束の日でも、気になっていた彼女と食事を予定している日でも、全く関係ない。
スケジュールに間に合わなそう、バグが見つかった、検討不足で当初想定していた仕様ではうまくいかない、顧客が既に決定したことを変更してくれと言っている、担当者同士で喧嘩してる…etc
挙げだしたらキリがない。
トラブルはやってくる。PMの席に。
PMの仕事はトラブルを解決させてプロジェクトを成功させること
とはいえ、発生するトラブルを解決させてプロジェクトを成功に導くのがPMの仕事である。
しかし、トラブルが発生するたびに解決し、次のトラブル発生まで待っていると、ただの『モグラたたき』になってしまう。
もちろん発生したトラブルを解決させるのは必要なことである。
しかし、発生したトラブルの解消と同時に、将来発生する可能性のあるトラブルを事前に検知して、先に手を打つことがトラブルの削減に重要なことである。
過去発生したトラブルの原因や傾向を分析して『将来発生するであろう同様の不備』を解消することで、過去に発生したトラブルの再発を防止することができる。
加えて、品質の向上にもつながる。
また、現時点では表立っていないものの、『潜在している不備』の検出に力を入れることで、トラブルに発展する前の状態で摘むことができる。
トラブルを未然に防止するには
では、『トラブルに発展する前の状態で不備を検知して対策を打つ』ためにはどうしたらいいのか。
それは、「経験」と「分析」を繰り返し、「蓄積」させて「利用」するのが一番いいだろう。
また、自分の経験だけではどうしても数に限界があるし、偏りも出てきてしまうため、チームや職場のメンバーの話を聞いて経験として蓄積させることが有用だろう。
これに加えて『本を読んで経験を補う』という方法もある。
トラブル事例と解決方法の知識習得・蓄積にとっておきの本を紹介する。
PMおすすめ本『なぜ、システム開発は必ずモメるのか?』
『なぜ、システム開発は必ずモメるのか?』 細川義洋 著
本書はシステム開発の現場で発生するトラブル事例と、解決方法を解説した本である。
架空のIT弁護士である「有栖川塔子」が、次々に寄せられるシステム開発のトラブルの相談に対して解決の方向性を示すという、ストーリー形式で進んでいく。
また、「有栖川塔子」をはじめとする様々な架空のキャラクターの会話形式で書かれているため、純粋に読みやすいし、その状況や登場人物の心情をイメージしやすい。
また、本書に登場するトラブルは、開発の契約からテスト・検収まで、システム開発のほぼすべての工程を網羅している。
トラブル事例は、工程別に数事例ずつ記載されているため、実務で特に力を入れたい工程やから読み始めることができる。
本書は開発ベンダー視点だけではなく、「ユーザー」や「顧客側のシステム開発部門」といった各ステークホルダー視点で注意すべきことが書かれている。
なんと言ってもシステム開発はベンダーだけでは完遂させることは絶対にできない。
ユーザーを含む全ステークホルダーが協力することが必要だ。
職場環境的に許されるのであれば、ユーザーや顧客に本書をおススメするのもいいだろう。
自身が過去に経験したトラブルの分析や、考えもしなかったトラブルを知識として得ることもできるのでPMに強くおすすめできる本である。
また、書かれているのはトラブルと解決方法がメインであるが、PMとしての姿勢や考え方を学ぶこともできる。
現在自分が持っている考え方や行動は、はたして『正しいPM』と言えるのか。
それを見直すきっかけを与え、方向性を教えてくれる良本である。
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最後に一言
毎日のように新しいトラブルが発生するのは仕方がないことである。
「発生するトラブルをいかに削減し、品質を上げつつ、自身の負荷も下げるか」ということに力を入れるべき、と私は考える。
私もトラブルの解消に頭を悩ませ、トラブルの未然防止に力を入れている。
分野や環境に違いはあれども、同じ「PM」という役割を担っている方は「品質向上のため、顧客のため、そして自身のために」一緒に頑張りましょう。